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さて出雲の旅でのもうひとつの目的は、 足を延ばして「松江城」に登城するためです。 松江城も現存12天守の一つで、山陰では唯一の天守閣なのです。 松江城は別名「千鳥城」とも呼ばれ、 その姿は力強さにあふれていながらも、 どこか気高さを感じられるものがあります。 松江城は1611年、初代城主・堀尾吉晴が, 5年の歳月をかけて築城しました。 城主は、堀尾吉晴、忠氏、忠晴三代、京極忠高のあと、 徳川家康の孫に当たる松平直政公が信州松本から移封され、 以降、松平氏の十代に亘る治世が明治維新まで続きます。 明治8年、松江城内の建物は全部取り壊されたましたが 幸いなことに天守閣だけは有志により保存されました。 天守閣は望楼様式を加えた複合天守閣で、外観5層、内部は6階です。 実戦本意で安定感ある無骨とも思える体裁ですが、 桃山文化を彷彿とする壮重雄大な手法が見られます。 松江城の石垣はごぼう積みとも、 あるいは野面積(のずらずみ)と呼ばれる工法ですが、 400年を経て、なお寸分の揺るぎも見つからないところに、 昔の建築技術の高さが窺い知れます。 ところで松江城の城主、堀尾家は三代、京極忠高は一代限りとなっています。 いずれも嗣子がないためのお家断絶によるものなのですが、 そのことに関して、松江城の気高い姿からは、想像もつかないような怖い話が隠されているのです。 「小泉八雲」の「人柱にされた娘」に書かれているので、ここではその要約を書いておきます。 松江城、初代城主・堀尾吉晴が工事に取りかかったところ、 土台の石垣が突然崩れるという事故が2回続けて起こります。 原因を調べるために崩壊した箇所を掘り下げてみると、なんと錆びた槍が貫通した頭蓋骨が出てきます。 これが原因と考えた吉晴公は丁重に祀ったのですが、 その後、吉晴公の実の娘は病を苦に自殺し、継嗣である忠氏はマムシに咬まれて急逝してしまいます。 さらにお家騒動があって、果ては三代目で断絶。 そして次に入部した京極氏も、嗣子ができないために断絶の憂き目を見ます。 その後、松江城に入城するのが徳川家康の孫、松平直政公です。 その時点で、天守閣は荒れ放題になっている上に、 最上階の「天狗の間」に夜な夜な娘の亡霊が出て、直政公を悩ませるのです。 そしてこの亡霊こそが、崩壊した石垣に人柱として埋められていた娘であると分かり、 直政公が手厚く供養して、亡霊は出なくなったそうです。 度重なる不幸やお家断絶も、槍が貫通した頭蓋骨のたたりを鎮めるために、 娘を人柱にしたことで、さらなる災厄を呼んだということなのでしょう。 夏場に訪れるといいかもです(冷汗) ところで松江を語るとき、絶対に外せない人物がいます。 松江城七代目城主、松平不昧公(ふまい)こと松平治郷です。 1769年、17歳で城主となった不昧公は、 逼迫した財政を立て直そうと藩政改革に乗り出し、 多少強引なところがあったにせよ、みごとに解消して名君の誉れを得ます。 また茶の湯に関しては、流派や形式にこだわらない不昧流を起こすのですが、 藩の財政が立ち直り、余裕ができると茶道具に贅を尽くすようになり、 並みの大名では手に入れることの出来ない茶器を数多く買い入れます。 それは立ち直った藩の財政が再び傾くほどであったそうです。 このために不昧公の評価が、今もって名君であるかどうか、 定まらないところでもあるのです。 ただ贅を尽くしての茶道具の収集によって、 国宝にもなっている天下の名器を今に伝えた功績は大きいですね。 また茶人・不昧公が残した風流は、松江の人々に息づいており、 松江のお茶の消費量は全国平均の5倍。 一世帯あたりの和菓子の消費量は全国平均の1.5倍だそうです。 |
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