京都の旅

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　　　　　　　　　　　　　　　　　京都の旅　２

次なる京都の旅は、大原の里です。　　　　　　　　　　　　　京都は日本人のふるさとであると私は思っています。　　　　　　　　　　　それゆえ何度も京都を旅しにくるのです。　　　　　　　　　　　　　　　◇　京都の旅～大原の里　◇ 　　　　　振り返ってみると、私にとっての京都の旅は、　　大原への旅と言ってもいいほどで、　　大原を訪ねることが京都への旅のようなものなのです。　　　　大原へは京都駅からバスか車で行っても、　　軽く１時間はかかってしまいます。　　遠いけれど大原へはいつも丸一日かけて、　　京都の空気を吸いに行きます。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ここしばらく京都への旅をしていないので、　　会えない切なさ、もどかしさが手伝っているのか、　　いま現在、京都で最も好きなのが大原なのかもしれません（笑）　　　しばらく京都に旅をしていないのは、　　「寂光院」の許しがたい放火事件以降、　　会いに行く気力を失っていたからなのです。　　　　　何だか大切なものを失ってしまった虚脱感からか、しばし放心状態に陥っていたのです。　　　　でも最近はまた懐かしく感じ始めていますし、　　　　今はどうなっているのだろうと気がかりになっているので、近いうちに旅をすることになるでしょう。　　　　　源平最後の合戦、壇ノ浦の戦いで、「建礼門院」の母である「二位の尼（時子）」は、　　　　平家一門の総帥、知盛に敗戦を告げられると、　　　　もはやこれまでと建礼門院の子、安徳天皇を抱いて船べりへと進みます。　　　　　そのとき数え年８歳の安徳天皇が、「尼御前、私をどこへ連れて行くの」と問うと、　　　　二位の尼は「波の下にも都はございましょう」と答え、そのまま海に飛び込みました。　　　　　建礼門院も我が子と母を追って飛び込むのですが、　　　　沈みきらないうちに、源氏の武士に引き上げられてしまいます。　　　　その後、京の都に連れ戻された建礼門院は、出家し寂光院に隠棲するのです。　　　　　時に２９歳。その後、彼女は亡くなるまでの２８年間、静かに念仏を唱える日々を過ごし、　　　　我が子安徳天皇を始めとする平家一門の人々の霊を弔います。　　　　　出家した翌年、建礼門院の義父で、安徳天皇の祖父にあたる後白河上皇が、　　　　彼女を気遣い寂光院を訪れました。　　　　その時、建礼門院はとめどなくあふれる涙を、押さえることができなかったと言います。　　　　　平家物語の一節を足早に紹介しました。　　　　　自ら命を絶とうとして、それを果たせず生還したとき、　　　　その人が何を思うのか、私には分かりません。　　　　　ただ「寂光院」（焼失前）の本堂の前に立つと、　　　　彼女の深く重い悲しみには思いが至ります。　　　　ただ本堂の前に立つだけです･･･。　　　　　そうすると、彼岸でいつまでも親子仲睦まじく暮らしてください、　　　　と心の底から祈りの気持ちが湧いてくるようです。　　　　　　ところでこの「寂光院」は用命天皇の菩提を弔うため、　　　　聖徳太子が５９４年に創建したと伝わっています。　　　　　それにしても５年以上前、　　　　平日に訪れた時でも、人があまり歩いておらず、　　　　寂しい山里という形容がピッタリの大原の地に、　　　　１４００年前、菩提寺を建立する理由は何だったのか、　　　　本当に不思議に思います。　　　　　ひょっとしたら、次こそ答えが見つかるかもしれないと思い、　　　　大原の里に旅を繰り返しているのかもしれません･･･。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　次につづきます